豊玉発句集
●豊玉発句集とは?
文久三年春、土方さんが、それまでに詠んだ句の中から自選した41句を選り抜いてまとめたもの。
自らの俳号「豊玉」を冠した一冊の句集です。
浪士隊として京都に発つ前に、急遽まとめられたものだったので、まだ草稿段階だったものと考えられたりしてます。
俳句としての出来は専門家から見れば決して良いものとは言えない(笑)そうですが、可愛いからよし!!
風流心があって、分かりやすくて(笑)素敵ですよね!!
京都では鬼の副長と呼ばれた彼の、意外な可愛らしさを表す句集です。
差し向かう心は清き水鏡
(沖田総司辞世の句「動かねば闇に隔つや花と水」がこの句に対する返歌と言われています)
裏表なきは君子の扇かな
水音に添えてききけり川千鳥
手のひらを硯にやせん春の山
白牡丹月夜月夜に染めてほし
願うことあるかも知らず火取虫
(火取虫は火をみると飛び込んで死んでしまうんです)
露のふる先にのほるや稲の花
おもしろき夜着の列や今朝の雪
菜の花のすたれに登る朝日かな
しれば迷いしなければ迷わぬ恋の道
(○で囲まれています。これは、目立たせているわけではなく(笑)、打消しに用いられる、現在なら線を引いて消す、というような方法です。)
しれば迷いしらねば迷ふ法の道
人の世のものとは見へぬ桜の花
我年も花に咲れて尚古し
年々に折られて梅のすかた哉
朧ともいはて春立つ年の内
春の草五色までは覚えけり
朝茶呑てそちこちすれば霞けり
春の夜はむつかしからぬ噺かな
三日月の水の底照る春の雨
水の北山の南や春の月
横に行足跡はなし朝の雪
山門を見こして見ゆる春の月
大切な雪は解けけり松の庭
二三輪はつ花たけはとりはやす
玉川に鮎つり来るやひがんかな
春雨や客を返して客に行
来た人にもらひあくびや春の雨
咲ぶりに寒げは見えず梅の花
朝雪の盛りをしらず伝馬町
丘に居て呑のもけふの花見かな
梅の花一輪咲いても梅はうめ
ふりながらきゆる雪あり上巳こそ
(上巳とは3月3日。井伊大老の殺されたことに対する詩)
年礼に出て行道やとんびだこ
春ははるきのふの雪も今日は解
公用に出て行みちや春の月
あばらやに寝てひてさむし春の月
暖かなかき根のそばやひが登り
(下5文字は「あぐるたこ」だったものが見せ消ち(○で囲う)にして書き直されています)
けふもけふたこのうなりや夕げぜん
うぐひすやはたきの音もつひやめる
武蔵野やつよう出で来る花見酒
梅の花咲る日だけにさいて散
木曽掛橋
●木曽掛橋とは
土方さんが、上洛の際に、中山道の名所の情景を、一首ずつ色紙に記したもの。
・・・と、言われています。爆
そうなんです、こちらは、土方さんの作であるかどうか微妙なところなのです。
なんか和歌も上手いしね(笑)
横川秋月
あかすみむよかわの波にすむ月のかけもちになむ秋の山みつ
徳音晩鐘
山てらは外ともわかすおと遠き麓に響くいりあいの鐘
駒嶽夕照
駒嶽のはるる夕日に見る雪の光も寒くまかう白雲
御嶽暮雪
嵐吹く夕べの雲の絶まよりみたけの雪ぞ空に寒けさ
掛橋朝霞
立ち渡る明日の雲も色深き微かにこむる木曽の掛橋
夜覚夜雨
夜半の久しさなりゆく雨に借り枕寝覚めの床の山嵐も
小野瀑布
白妙に見る一筋は手作りのそれかとまかう小野の滝つせ
夜越晴嵐
明け渡る光も見えて風越の高根晴れゆく夜の浮雲